●収容所で思う戦争と人間
ポーランドの首都ワルシャワ[Warszawa]から列車で2時間半、そのクラクフ[Krakow]の街から西へ54キロ離れたところにオシフィエンチム[Oswiecim]という街があります。ドイツ名でアウシュヴィッツ[Auschwitz]と呼ばれる強制収容所があったんです。
ここは、昔から行ってみたい想いがありました。
学生時代にアウシュヴィッツのことを知り、(そんなひどい強制収容所があるんだ・・・)と関心を持っていました。
(実際に自分がその場所にいるとどんな気持ちになるんだろうか?)そんなことを考えていたんです。
戦争の傷跡を残している国は、たくさんあります。しかし、爆弾などを使わずに、人間が、人間の手で強制的に殺害していた場所。それも150万人以上という想像しにくいほどの数を殺し続けていた場所、アウシュヴィッツ。
実際に訪れると、本で読むより、話を聞くより、やはり言葉では書き表しにくい感情がたくさん出てきました。
人間って、とても愚か。そして傲慢で、人間のおごりを利用したシステムのような気がします。また人間って、とても不思議なものなんだ、、、そんな感情も出てきました。
誰が決めたか分からない人間の優劣。
ナチス・ドイツのリーダーであるヒットラーは、アーリヤ人(ゲルマン人)の優秀性を維持するため、「ユダヤ人を排斥する」というイデオロギーにもとづいていました。
ヒットラーが筆頭ではあったものの、その考えを支えていたのはドイツの一般市民です。また、ユダヤ人狩りは、ドイツ国内だけではなく、ノルウェーや、オランダ、フランス、チェコなどその他大勢のヨーロッパの国々も協力していました。
ということは、ヨーロッパの人々の心には、やはり人間への優劣があり、ユダヤ人への偏見があったということが感じられます。
確かに私も旅をしていて、「この街にはジプシーがいる」と聞くと、(スリに気をつけよう)と思います。いつの間にか「ジプシーは、人のものを盗る」というイメージを持っているように感じます。
このように、いつの間にかできあがるのか分からない人種へのイメージというものが、人間は持っているように思います。
今の日本国民の、北朝鮮へのイメージは、どうでしょうか?
北朝鮮へ拉致された多くの人が救出されたり、捜索されたりしているということで、新聞などのマスコミで取り上げられています。それによって、北朝鮮へのイメージも日本人にとってまた変わった人もいるのではないでしょうか。
「ユダヤ人だから、殺しても構わない」。
いろんな理由をつけ、ユダヤ人虐殺を正当化できた戦争。
もうひとつ私をびっくりさせたのは、囚人が囚人を管理するシステムです。アウシュヴィッツには、平均13,000人〜16,000人の囚人がいたといいます。たくさんいる囚人。その中でも、差別があり、囚人の身分の差があります。
囚人服はみな同じなんですが、胸元には囚人番号とともにマークをつけています。例えば、赤三角は政治犯、桃三角は同性愛者、紫三角はジプシーなど。ひと目で、囚人を識別できるようにしていました。
身分の高い囚人は、ご飯を作る様な比較的体が楽な仕事をしていたようです。建設といった過酷な重労働は、死と隣り合わせです。仕事をしている囚人たちの見張りをしていたのも囚人、囚人が囚人を管理するというシステム。
そんなシステムを作ると、人間はルールを守ることが当たり前になり、ルールに疑問を感じる人も、反対の声をあげる人もいなくなってしまうようです。
残虐なアウシュヴィッツ。当時、ヒトラーが唱えた、「危険な存在を排除する政策」は、アウシュヴィッツに関わる人にとっては、疑問がなかったんだといえます。
しかし、戦後になり、世論がこのアウシュヴィッツの事実を知ると、捕まえられた人は、「ヒトラーに騙された」と言ったそうです。簡単に責任転嫁ができる戦争。
戦争だったから、、、、
私には、戦争体験がありません。だから、戦争体験のある人がこのアウシュヴィッツを訪れたら、また感じ方が違うと思います。そして訪れたユダヤ人たちは、どのように感じるのでしょうか。
今回、アウシュヴィッツでガイドをされている中谷剛さんのおかげで、より深く多方面からアウシュヴィッツのことを知ることができました。本で読んでいたこととは、また違った角度から感じることができました。
この負の世界遺産は、これからの若い人々に受け継いでいかないといけないものです。そして、その歴史を私たちも背負い、同じことを繰り返さないようにしないといけません。
そして、私たちはこのアウシュヴィッツに訪れることができたことによって、こうしてホームページで紹介して、アウシュヴィッツの出来事を伝えることが使命だと感じました。
イスラエルの戦争。
このアウシュヴィッツを見て、ユダヤ人が建国したイスラエルという国の戦争に、すごく心が痛い気持ちなりました。
ヒットラーは、第2次世界大戦まで権力とトップの座を手に入れたかもしれない。でもそれを支えた人々は、一体何を手に入れたのでしょうか?
戦争とは、ひとりで出来るものではありません。
戦争をしている国、人々は一体何を手に入れることができるのでしょうか?
そんな疑問や人間の不思議さに驚くばかりで、私にとっても何も答えがでてきません。
ただこうして、幸いにも世界を周ることができているので、戦争の傷跡や世界の現実を少しでも多くの人に伝えることをしていくことが、私たち夫婦に今できることなんだろうと思います。
たかさん♀
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■コメント
紫の三角をつけられた人たちは、エホバの証人です。
彼らは政治的に中立の立場を守ったために、収容所に入れられ、拷問を受け、殺された人もたくさんいました。信仰を捨てさえすれば、ハイルヒットラーと言いさえすればすぐに釈放されると言われていたにもかかわらずです。ガイドさんが彼らをジプシーだと言ったのですか?とても残念です。
投稿者 etsuko : 2006年09月18日 23:27
etsukoさんへ
いつもコメントありがとうございます。
囚人マークについて確認したところ、確かにエホバの証人でした。私たちの記憶違いで、ご迷惑をおかけしました。訂正をありがとうございます。
これからも、よろしくお願いします!
たかさん♀
投稿者 たかさん♀ : 2006年09月19日 21:21
迷惑だなんて、そんなつもりではなかったのですが、読み返してみると怒ってるように聞こえますね。
言葉が足りませんでした。
こちらこそすみません。
個人旅行でなければなかなかいけないところや人々を、お二人が案内してくださるので本当に楽しみにしているんですよ。
投稿者 etsuko : 2006年09月22日 06:07
etsukoさんへ
いえいえ、間違った情報を公開するのはよくないことですから、ご指摘いただいて感謝しています。
これからも楽しんでもらえるように、頑張って書いていきまーす!!いつもありがとうございます!
たかさん♀
投稿者 たかさん♀ : 2006年09月23日 03:41
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